なぜ新・スパイ防止法が必要なのか(3)

安倍政権による特定秘密保護法制定

 民主党政権が自己の都合を契機として、秘密保護法を制定しようとしたことは前述しましたが、では、安倍政権はなぜ特定秘密保護法を制定したのでしょうか?

 それは、民主党政権のように「自らに都合の悪い情報は隠蔽したい」とのやましい想いからではありませんでした。制定の目的については、2013年10月25日に行われた、菅義偉官房長官の会見の言葉に的確に表現されています。菅長官は次のように述べました。

 「情報漏洩に対する脅威が高まっている状況や、外国との情報共有は情報が各国で保全されることを前提に行われていることを考えると、秘密保全に関する法制を整備することは喫緊の課題だ。また、新たに設置される予定の国家安全保障会議の機能を、より効果的にするためにも重要だ

 この会見の言葉のポイントは2つあります。1つ目は、重要情報を外国(特に同盟国)と共有する時に、日本政府から情報が筒抜けということになれば、どこの国も秘密情報を教えてくれなくなるでしょう。それを防ぐために「特定秘密の取扱いの業務を行うことができる者が特定秘密を漏らしたときは、10年以下の懲役に処し、又は情状により10年以下の懲役及び1000万円以下の罰金に処する」との条文(特定秘密保護法第23条第1項)を設けたのでした。

 2つ目は、国家安全保障会議(2013年12月4日設置)との関係です。同会議は、国家安全保障の重要事項を審議する機関であり、首相の政策決定のサポートを行います。同会議をサポートするために国家安全保障局も置かれました(2014年1月7日発足)。

 同局は各省庁と情報のやり取りを行いますので、そうした時に秘密情報の管理が不十分では、役割を十分に果たすことはできません。自民党政権における特定秘密保護法は、このような目的から創られたのでした。民主党政権の時とは、志と動機が異なります。

 しかも、国民の知る権利、取材の自由などに配慮することは当初から政府は述べていました。実際、特定秘密保護法の第22条には「国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」との条文が盛り込まれました。

 同法案は野党の反対もありましたが、2013年12月6日、参議院本会議で与党の賛成多数で可決、成立しました。

 次に同法案の内容を見つつ、それでもなお、スパイ防止法が必要な理由を説いていきましょう。

つづく

 

濱田 浩一郎(はまだ こういちろう)
1983年生まれ、兵庫県相生市出身。
歴史学者、作家、評論家。皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。
兵庫県立大学内播磨学研究所研究員・姫路日ノ本短期大学講師・姫路獨協大学講師を歴任。
現在、大阪観光大学観光学研究所客員研究員。現代社会の諸問題に歴史学を援用し迫り、解決策を提示する新進気鋭の研究者。

著書に『播磨赤松一族』(新人物往来社)、『あの名将たちの狂気の謎』(中経の文庫)、『日本史に学ぶリストラ回避術』(北辰堂出版)、『日本人のための安全保障入門』(三恵社)、『歴史は人生を教えてくれる―15歳の君へ』(桜の花出版)、『超口語訳 方丈記』(東京書籍のち彩図社文庫)、『日本人はこうして戦争をしてきた』(青林堂)、『超訳 橋下徹の言葉』(日新報道)、『教科書には載っていない 大日本帝国の情報戦』(彩図社)、『昔とはここまで違う!歴史教科書の新常識』(彩図社)、『靖献遺言』(晋遊舎)、『超訳言志四録』(すばる舎)、本居宣長『うひ山ぶみ』(いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ16、致知出版社)、『龍馬を斬った男 今井信郎伝』(アルファベータブックス)、『勝海舟×西郷隆盛 明治維新を成し遂げた男の矜持』(青月社)、共著『兵庫県の不思議事典』(新人物往来社)、『赤松一族 八人の素顔』(神戸新聞総合出版センター)、『人物で読む太平洋戦争』『大正クロニクル』(世界文化社)、『図説源平合戦のすべてがわかる本』(洋泉社)、『源平合戦「3D立体」地図』『TPPでどうなる? あなたの生活と仕事』『現代日本を操った黒幕たち』(以上、宝島社)、『NHK大河ドラマ歴史ハンドブック軍師官兵衛』(NHK出版)ほか多数。
監修・時代考証・シナリオ監修協力に『戦国武将のリストラ逆転物語』(エクスナレッジ)、小説『僕とあいつの関ヶ原』『俺とおまえの夏の陣』(以上、東京書籍)、『角川まんが学習シリーズ 日本の歴史』全15巻(角川書店)。


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