米国では1999年に核スパイ事件が発覚しました。同事件は米中国交によって多数の中国人研究者や技術者がロス・アラモス、リバーモアなどの国立研究所に派遣され、そうした中国人研究者や中国系米国人技術者から核技術や兵器技術の情報収集を図っていたものです。このため米国は監視体制を強化しましたが、その後もスパイ事件は後を絶ちません。 

 2005年に発覚したパワー・パラゴン社事件では、中国人技術者にスパイ訓練を施した後、米国に移住、帰化させ、同社に入社させて20年間は真面目に勤務させ、最高機密にアクセスできるようになってからイージス艦技術や潜水艦の静音化技術など米海軍の最高機密を収集させていた、と情報保全アナリストの長谷川忠氏は指摘しています。 

 また2009年のロックウェル・ボーイング社事件では、同社に勤務する中国系米国人を探し出し、約6年間にわたって接触してスパイに仕立てあげ、同社のスペースシャトルやB1爆撃機など宇宙・航空関連技術を約20年間にわたって手に入れていました。 

 中国は中国人だけをスパイにしている訳ではありません。ハニートラップ(性的関係でスパイにする)や金銭の誘惑でスパイに堕ちる米国人もいます。米ハワイ州の連邦裁判所は2011年1月、巡航ミサイルをレーダーに探知されにくくするステルス能力に関する軍事情報を違法に中国政府に提供したとして元技術者ノシル・ゴワディア被告(当時66)に対し禁錮32年の判決を言い渡しています。 

 同被告は2003~2005年にかけて巡航ミサイルの設計に必要な情報を中国政府に伝え、見返りに少なくとも11万ドル(約9000万円)を受け取っていたといいます。中国の次世代ステルス戦闘機「殲20」にこうした軍事情報が使われているのは疑いないでしょう。

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